こころの安らぎ文庫

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ASKA(CHAGE&ASKA)の恐るべき言語能力

私は文字を書く仕事をしているため、言語には敏感な方だとおもいます。例えば、音楽を聴くとき、メロディよりも歌詞の意味の方が気になるタイプなんです。

 

常に美しい日本語を書きたいと思っています。そんな私が、もしも「一番美しい歌詞を書ける人を一人挙げよ」と言われたら、迷うことなくASKAさん(CHAGE&ASKA)を選ぶだろうなと思います。

 

ASKAさんは強烈な歌唱力や、メロディのすばらしさが取り沙汰されることが多いですが、彼の書く歌詞の恐るべきパワーを語る人は少ないように思います。ASKAさんの歌詞の何が恐るべきパワーなのか。それは比喩による情景描写に他なりません。

 

例を挙げてみます。

「夜が明けるまで」という事を美しい言葉で言い換えてみることを考えます。「太陽が目覚めるまで」「夜明けの刹那まで」など、私はそれくらいしか思いつきませんが、ASKAさんは

「星が止むまで」

と表現してしまうのです。この場合の夜は「星降る」美しい夜だったのでしょう。しかしそこには背徳心もあるように感じられます。と言うのも「雨が上がる」ように「星が止む」のも、雨上がりの様な解放感が込められているように聞こえるからです。

 

他にも夜明けを例えた表現としてASKAさんは

「摩天の森が息をしてる」

と言ってしまうんですね。つまり、夜中のあいだ、高層ビルは電気を消して、死んだように寝ているのです。しかし、朝が来ると多くの人が出社して高層ビルも息をしだします。

 

数え上げればきりがないASKAさんの卓越した言語能力ですが、あと一つだけ挙げます。「私はどんな夢をみていたのだろうか」と回想する表現。どんなふうに表現できるでしょう。「記憶の片隅に忘れ去られた夢はどんなものだっただろう」「置いてけぼりにしてきた夢はどんなだっただろう」くらいしか私は思いつかないのですが、

ASKAさんは

「どんな薔薇を噛んでいたのか、僕の夢は」

と言ってしまうんですよね。もう鳥肌が立ってしまいます。

 

ASKAさんの歌詞を研究する人は少ないようですが、彼ほど日本語を美しく操れるアーティストも珍しいのではないかと思います。ASKAさんの様に美しい日本語を書けるように努力したいと思っています。

 

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